ユドヨノ政権誕生1年、「大変な年」

1年経ちました。

初の直接選挙を経て誕生したユドヨノ政権は20日に1年を迎えた。スマトラ沖地震などに見舞われながらもアチェ和平協定の締結など目に見える成果を挙げた。また政治的なリスクが高いとされる石油燃料値上げを今年2度実施した。一方、投資環改善では実施面で課題が残る。大統領は19日、この1年を「大変な年」と振り返っている。

 ユドヨノ大統領は19日、今年を振り返って経済成長や雇用創出、貧困削減、インフラ整備を目指したものの、世界的な原油価格上昇、ルピア安、鳥インフルエンザ、バリ島同時爆弾テロなどの外的な阻害要因が多数あったと指摘。「大変な年」だったと語った。

 アンタラ通信によると、大統領は来年の施策として、国民の福祉向上のために教育費の無料化などによる教育の質向上、貧困層向け医療の無料化、雇用の促進を図る方針をあらためて示した。

 ユドヨノ大統領が就任にあたり掲げた基本政策は、◇平和・安全保障◇民主・公正◇繁栄する国家の3本柱。このうち、「アチェ自由運動」(GAM)との和平協定を8月に実現したことで、国内の安定は大きく前進。大統領は、パプアでの分離運動解決も対話により進める意向を示している。

 アチェでは現在GAM武装解除と政府治安部隊の撤退第2弾が進行しており、18日までにGAMは233丁の武器を引き渡し20〜21日には国軍兵士6,000人の撤退が行われる。アチェ監視団(AMM)は、第2弾の完了で和平プロセスが後戻りすることがない地点まで到達するとしている。

 一方、今月1日のバリ島同時爆弾テロ事件の発生で国内でのテロの脅威は再認識された。政府は反テロ法の改正を含めたテロ対策の見直しを迫られている。国際協力銀行JBIC)が今年6月に国家開発企画庁(バペナス)や経済担当調整相事務所に昨年実施した日本の「製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」を説明した際に「治安・社会情勢が不安」との回答が57.9%を占めている。この際、同事務所からは、「政策だけでは改善の難しい大きな課題を突きつけられた」との反応が示されたという。

 「民主・公正」では、政府の汚職撲滅運動が象徴的で、大統領は内外の投資フォーラムで必ず運動の成果に触れる。ただ、汚職を測る際の目安として利用されているトランスパランシー・インターナショナル(TI)が18日に発表した年次の汚職指数ではインドネシアは158カ国・地域中137位と低位にとどまった。またTIは、政府が「汚職と無縁」とする決意を表明しているスマトラ沖地震への被災地への援助資金に関しても懸念を示した。

 ■日本との経済連携早期に

 「繁栄」面の施策は、貧困削減に向けた経済成長やそのための投資環境整備で、インフラ・サミットなどが開催されたほか、財政を圧迫する石油燃料補助金の削減により、3月に平均29%、10月に126%の石油燃料値上げを実施している。

 バクリー経済担当調整相は17日、「改革の政治的意思」をあらためて強調している。また、大統領の6月の訪日で合意した日本インドネシア戦略的投資行動計画(SIAP)に盛り込まれた、5年間での日本からの投資倍増目標達成への期待や自由貿易協定(FTA)を含む経済連携協定EPA)を来年にも締結したいと述べた。また、遅れている新投資法の国会提出や税制改革、労働法規改定などに取り組む姿勢を示した。

 両国の官民合同投資フォーラムは来月に3回目の企画調整委員会を開催し、これまでの「課税・通関」「労働」「インフラ」「産業競争力・中小企業振興」の各作業部会の協議を集約し今後の方針を決定する予定。
(NNA) - 10月20日10時25分更新