ジェンダー人類学を読む
- 作者: 宇田川妙子,中谷文美
- 出版社/メーカー: 世界思想社
- 発売日: 2007/04
- メディア: 単行本
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自分のフィールドが関連している1章のインドネシア、それから7章の親族関係から見たサモアのジェンダー、オーストラリア・アボリジニのジェンダー研究を記した8章、10章の国際移動とジェンダー辺りが非常に刺激的でした。オーストラリアの白人女性人類学者とインフォーマントとの共著論文に関する指摘は、私の3月のワークショップでの経験と重なるものがあり、大変参考になりました。今書いている論文にも生かせそうです。
さて、終章は、レビュー論文まとめの領域を超えていて、各地域固有の中心的テーマが「アパデュライのいう「門番」概念の存在とその政治性が大きく作用している」(358)ことを指摘した上で、グローバリゼーションや学問上のパラダイム転換さらにフェミニズムの交流を共通して経験し、それが各地域のジェンダー研究の論点の推移や議論の深化に関わっていることを、国連女性の10年やセクシュアリティなどに絡ませて論じており秀逸です。最後にジェンダーという差異の意味を考察するところに戻ってきて、ジェンダー研究って面白い、もっと勉強したい、と思わせる1冊です。