ジェンダー人類学を読む

ジェンダー人類学を読む―地域別・テーマ別基本文献レヴュー

ジェンダー人類学を読む―地域別・テーマ別基本文献レヴュー

読みましたよ。先輩や、1月のワークショップ報告それから先日の研究会報告でコメントをいただいている先生方が書いた文献レビュー集です。
自分のフィールドが関連している1章のインドネシア、それから7章の親族関係から見たサモアジェンダー、オーストラリア・アボリジニジェンダー研究を記した8章、10章の国際移動とジェンダー辺りが非常に刺激的でした。オーストラリアの白人女性人類学者とインフォーマントとの共著論文に関する指摘は、私の3月のワークショップでの経験と重なるものがあり、大変参考になりました。今書いている論文にも生かせそうです。
さて、終章は、レビュー論文まとめの領域を超えていて、各地域固有の中心的テーマが「アパデュライのいう「門番」概念の存在とその政治性が大きく作用している」(358)ことを指摘した上で、グローバリゼーションや学問上のパラダイム転換さらにフェミニズムの交流を共通して経験し、それが各地域のジェンダー研究の論点の推移や議論の深化に関わっていることを、国連女性の10年やセクシュアリティなどに絡ませて論じており秀逸です。最後にジェンダーという差異の意味を考察するところに戻ってきて、ジェンダー研究って面白い、もっと勉強したい、と思わせる1冊です。