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[旬に聞く]
男女共同参画審議会会長 竹川佳寿子さん

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 県の「ふくしま男女共同参画プラン」の検証・見直し案が19日、明らかになった。社会的、文化的に形成された性差「ジェンダー」という用語をめぐって国の基本計画が揺れる中、県の見直し案では、この用語を継続して盛り込むことが示された。見直しを進めている県男女共同参画審議会の竹川佳寿子会長(74)に聞いた。
田中美穂


 ――ジェンダーをめぐって、論争が起きています。
 
 「そうですね。言葉の意味をよく理解していないからだと思います。なぜ言葉自体をなくしてしまおうという動きに発展するのか、理解できません。おそらく、『セックス』という言葉と混同し、ジェンダーフリーとセックスフリーを一緒にして反対しているのではないでしょうか。言葉の意味がわからず、生物的な男女の差をも認めないのかという理解に結びついているのかもしれません」

 ――県議会でも議論がありました。

 「直接は聞いていませんが、言葉の誤解があったようです。日本語に置き換えたらどうかという動きもありますが、国際的にも認められ、広く使われている言葉です。県の審議会ではそうした指摘は出ていません」

 「見直し案では、学校教育におけるジェンダーにとらわれない男女平等教育の推進を継続して盛り込み、女性のエンパワーメント(女性自ら意識と能力を高め、政治的、経済的、社会的、文化的に力を持った存在になること)の推進と自立促進を基本目標に掲げています。男性の家庭生活への参画支援が新たに盛り込まれました」

 ――仕事を持つ女性が増えると少子化が進むという意見がありますが。

 「少子化の理由は様々であり、短絡的な考え方です。昭和30年代に女性のライフスタイルが大きく変わりました。にもかかわらず、高度成長期を迎えて仕事に縛られた男性の働き方に合わせ、女性は家庭に入ることが良しとされました。しかし結局は、少子化が進みました。女性の問題だけではなく、男性の働き方をも見直す時期に来ているのだと思います。仕事と家庭生活、地域活動の3分野でバランスを取る生活を社会が承認しないといけない」

 ――ジェンダーは女性だけの問題ではありませんね。

 「そうです。人権問題として広くとらえるべきです。例えば男性が育児に参加しようにも、現状の働き方では無理です。出世をあきらめたり、評価を下げられたりするなど負担が大きい」

 「また、『男らしさ』という荷物を背負いきれずに苦しむ男性が目立っています。リストラされた男性が妻にも言えずに悩んだ末、自殺するといったケースが少なくない。苦労は多いかもしれませんが、男女が共に担い合い、お互いの個性や能力を生かすことが幸せにつながるのではないでしょうか」

 ――広く理解を得るにはどうしたらいいのでしょうか。

 「法律や制度は整いつつありますが、一方でジェンダー意識は生活に深く浸透しています。すべての人が平等に生き生きと暮らせる社会を目指すには、教育が大切です。県だけでなく、より地域生活に密着した市町村でも話し合いを深めてほしいと思います」

 竹川佳寿子(たけがわ・かずこ) 1931年、名古屋市生まれ。東北大学文学部卒業後、同大助手に。55年に県立医大講師となり、81年に県立医大教授となった。退官後の96年5月から同大名誉教授。県青少年問題協議会委員などを務め、02年から現職。専門は日本近世史で、「東北の歴史」「福島県の歴史」(ともに共著)などの著書がある。


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